小学校4年生の社会科において、単元統合型の授業デザインに、問題解決過程に合わせた学習方略活用支援を組み合わせた授業実践の介入効果を検討した加藤達也氏・町岳氏の論文を紹介。
この論文を紹介する理由
「学習内容論」に重点が置かれがちな社会科授業研究において、「学習方略」に着目した研究であり、児童の問題解決過程をいかに支援していけばよいか考える上で参考になるからである。
この論文を読むことで分かること
- 社会科の問題解決過程において活用する学習方略
- 具体的な学習方略活用支援
論文の要約
1-1. 社会科における思考力
汎用的な知識の習得、実際の社会での活用につながる思考力を育成することの重要性は、日本の社会科教育の中では「社会は暗記科目ではない」等により長年指摘されてきた。
社会科における思考力とは、獲得した個々の知識を概念化・一般化という関連付けプロセスにより、活用できる知識にする力といえるだろう。
1-2. 社会科における単元統合型授業デザイン
単元を貫く問いにより大単元全体で社会的事象等を関連付ける単元デザインが概念化・一般化の促進に有効とされる一方で、その単元デザインは容易ではなく、実践研究の蓄積も十分ではない
1-3. 問題解決過程に合わせた学習方略活用
学習者にメタ認知を促すことによる学習効果の検討は、理数系の教科や国語科や外国語科の授業では先行研究が蓄積されている。しかし本研究の枠組みで、社会科における直接的学習方略活用促進を図ったことの効果検証はほとんどない。
小学校4年生の社会科において、単元統合型の授業デザインに、問題解決過程に合わせた学習方略活用支援を組み合わせた授業実践の介入効果を検討すること。
- 単元統合型授業のデザイン
- 授業実践
- 効果検証⁽概念化・一般化への効果⁾
- 効果検証(学習方略活用への効果)
第一に、単元統合型授業デザインの単元を貫く問いにより、社会的事象を関連付け、小単元を包括する大単元の単位で社会的事象を捉える効果を具体的に示したことである。
第二に、社会科における学習方略を、問題解決過程と関連させ、方略の選択・決定を徐々に児童へ任せたことの効果を示したことである。
- 「単元統合型」と「学習方略活用支援」における相互の因果関係の立証に至らなかったこと。
- 省察段階における検証が不十分であったこと
自分の考え
現場の教員が行う教育実践研究のモデルとして参考になる。
社会科授業研究において、単元の開発、開発した単元の実践に留まる研究が多くを占める。
こうした研究は「子どもの事実」が捨象されていると考える。
具体的には、社会科を学ぶ子どもの実際の活動、教師の問いに対する実際の応答、それらを経た子どもの実際の変容等である。
本研究を始めとした教育工学の研究方法に学び、「開発ー実践ー評価」のサイクルを踏まえた研究を行っていきたい。
論文情報
【タイトル】小学校社会科における概念化・一般化を促す単元統合型授業に学習方略活用支援を加えた授業デザインの効果
【著者】加藤達也・町岳
【雑誌名】『日本教育工学会論文誌』Vol.45 , No.1 , pp.93-102
【出版年】2021年
【こんなときにオススメ】自己調整学習を取り入れた授業づくりについて知りたいとき
【タグ】小学校社会科、自己調整学習
参考文献
加藤達也・町岳(2021):小学校社会科における概念化・一般化を促す単元統合型授業に学習方略活用支援を加えた授業デザインの効果 , 『日本教育工学会論文誌』Vol.45 , No.1 , pp.93-102
コメント