学習科学の成立と展開を振り返り、次の課題を同定することで、実践を支える学びの科学になり得る可能性を検討した白水始氏、飯窪真也氏、齊藤萌木氏の論文を紹介。
この論文を紹介する理由
近年、学校現場の中に取り入れられてきつつある学習科学の成立と課題を体系的に理解する上で参考になるからである。
この論文を読むことで分かること
- 学習科学という学問的特性
- 学習科学における研究方法
- 学習科学が向かう今後のあり方
論文の要約
学習科学とは、学習を実践的に研究し、その質を上げ続けることを目的として、人はいかに学ぶのかの理論と実践の持続的往還を図り、両者の互恵的深化を狙う学問分野である。
学習という現象の本来的な複雑さと、その現象に対する見方の複雑さを反映して、誕生以来約30年経つ今でも、方法論自体を模索している発展途上の研究分野である。
特に最近ではより多くの教育現場にいかにインパクトを与えられるかというスケールアップ(規模拡大)問題に直面し、さらなる深化を求められている。
実践の中で育ち、実践に活きる学びの科学」として学習科学を再定位することで、今後の発展の方向性及び教育心理学との協働可能性を見出すこと
- 学習の複雑性や多様性についての例示
- 学習科学における方法論の整理
- 実践学における学習科学の可能性の検討
学習科学の特徴である大規模実践研究に期待される知見は以下の3点に整理されている。
- 大規模な学習環境デザイン実践を通して、人はいかに学ぶかに関する原理の検証可能性を高める
- 原理やデザインをより広範囲で使っていく上での適用範囲、前提・制約条件を明らかにする
- 原理やデザインを社会実装する上での研究や連携の進め方に関する原理やデザインを明らかにする
- 生成された原則の質や適用範囲、前提・制約条件の検討
- 次の実践に活用するデータの収集についての検討
自分の考え
「理論と実践を往還」させる上で学習科学の知見は有効であると考える。
理論は、現場での実践を通じて検証される必要があるし、現場での実践の蓄積を一般化することによって理論を構築する必要がある。
学習科学を学び、実践者として研究者として「子どもの事実」に即した授業づくりを行っていきたい。
そのために、「理論を学ぶ→子どもの実態に即した実践→理論に立ち返る」というサイクルを意識したい。
論文や書籍に載っている理論が、目の前の子どもにそのまま適用できるとは限らない。
様々な要因が絡み合っており、学習というメカニズムが複雑であるからである。
理論を知って終わり、実践をして終わり、ではなく常に理論と実践を往還させることを意識する。
論文情報
【タイトル】学習科学の成立 , 展開と次の課題―実践を支える学びの科学を模索して―
【著者】白水始 , 飯窪真也 , 齊藤萌木
【雑誌名】『教育心理学年報』, Vol.60 , pp.137-154
【出版年】2021年
【こんなときにオススメ】学習科学について知りたいとき
【タグ】学習科学、デザイン研究
参考文献
白水始 , 飯窪真也 , 齊藤萌木(2021):学習科学の成立 , 展開と次の課題―実践を支える学びの科学を模索して― , 『教育心理学年報』, Vol.60 , pp.137-154
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