「学習としての評価」を視点として、市民性教育としての学習評価とは何のために何をどのように評価することだと考えられてきたのかについて、過去の先行研究を広くレビューすることを目的とした宅島大尭氏の論文を紹介。
この論文を紹介する理由
社会科において、「学習評価とは何をどのように行うことなのか」について考えるうえで参考になるため。
この論文を読むことで分かること
- 社会科において学習評価は「何のために行うのか」
- 市民的資質は「何のために何をどのように評価するのか」
- 日本における社会科学習評価論の到達点と課題
論文の要約
「学習としての評価」を視点として、市民性教育としての学習評価とは何のために何をどのように評価することだと考えられてきたのかについて、過去の先行研究を広くレビューすることを目的とする。
1.社会科において学習評価は「何のために行うのか」という目的を問い直すことの意味について、「学習としての評価」を観点にして述べる。
2.多義的な市民的資質は「何のために何をどのように評価するのか」について、D.カーの論考やイギリスのシティズンシップ教育ではどのように考えられているのかについての具体を示す。
3.シティズンシップ教育と地理教育との関係はどのように語られ、その学習評価は何のためにどのようにすることだと考えられているのか整理する。
4.日本における社会科学習評価論について、その到達点と課題を明らかにする。
①
市民性教育としての社会科学習評価論における重要概念として、「学習としての評価」、「自己調整」、「エージェンシー」に注目すべきである点を明らかにしたことである。
②
それらの概念に基づき、実践レベルでの具体化のための示唆を得たことである。先行研究の体系的なレビューをとおして、市民性教育としての学習評価は、市民的資質の育成に向けた学習者の学習改善を目的として、教師と学習者がともに構築していく学習プロセスを「評価(assessment)」することであることを明らかにした。
③
日本における社会科学習評価論の到達点と課題を明らかにしたことで、理念や理論と実践とを結ぶための実践的方法論の構築が研究レベルで求められていることを指摘したこと。
自分の考え
学習評価は、「『生徒にどういった力が見に付いたか』という学習の成果を的確に捉え、教師が指導の改善を図るとともに、生徒自身が自らの学習を振り返って次の学習に向かうことができるようにする」ためのものとして、その重要性が増している。
「知識の伝達者」としての役割から「学習のコーディネーター」としての役割への転換が求められている。
前者の役割であるならば、「知識をどれくらい習得しているか」を評価すればそれでよいと考えられる。
しかし、後者の役割であるならば、不十分である。
なぜなら、学習者の捉え方が大きく異なっているからである。
前者は、学習者を知識を受け取る存在であると捉えている。
一方で後者は、学習者を知識を主体的に構成する存在であると捉えている。
つまり、授業における主役が「教師」か「学習者」という違いであると考えらえる。
本研究は、授業における主役を「学習者」においた場合、「どのように評価すればよいか」という道筋を示している。
今後は、評価情報を受け取った学習者が、それをどのように活用し、いかに自己調整していくかという「複雑な学びの実態」を明らかにしていきたい。
論文情報
【タイトル】市民性教育としての社会科学習評価論の動向と課題ー地理学習を何のためにどのように評価するのかー
【著者】宅島大尭
【雑誌名】『教育学研究』, 第1号 , pp.411-419
【出版年】2020
【こんなときにオススメ】学習評価の研究について知りたいとき
【タグ】学習評価
参考文献
宅島大尭(2020):市民性教育としての社会科学習評価論の動向と課題ー地理学習を何のためにどのように評価するのかー, 『教育学研究』, 第1号 , pp.411-419
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