学習者が科学的概念を日常的事象に関連づけるためのはたらきかけを行うことで、学習者が自分の知識を手がかりに、科学的概念の理解を深める過程について明らかにすること目的とした石橋優美氏、藤村宣之氏の論文を紹介。
この論文を紹介する理由
子どもの認知発達の視点に基づき、教師がいかに働きけるべきか参考になるため
この論文を読むことで分かること
- 概念的理解の特質
- 日常的事象に関連づけたはたらきかけの効果
- 概念的理解の深化過程
論文の要約
【先行研究の課題】
第1に、科学的概念を理解することがどのような理解状態を指すのか十分に吟味されていない
第2に、科学的概念を理解させるための介入方法が必ずしも効果をあげていないことが挙げられる。
第3に、介入を実施した際の学習者の思考過程を検討していない点にある。
学習者が科学的概念を日常的事象に関連づけるためのはたらきかけを行うことで、学習者が自分の知識を手がかりに、科学的概念の理解を深める過程について明らかにすること
- 実験Ⅰ:「時系列的変化の推論」が、概念的理解に及ぼす効果とその過程を明らかにすること
- 実験Ⅱ:実験Ⅰのはたらきかけの促進可能性を追究すること
- 概念的理解の特質や水準を明らかにしたこと
- 「因果関係の追究→知識の関連付け→今後の変化の予測」による知識の活用が理解の深化を促すことを明らかにしたこと
- 推論課題と事後課題との関連の分析から介入場面での違いを見出したこと
促進効果がみられなかった生徒に応じたはたらきかけの考察すること
理科の他の分野においてメカニズムをとらえにくい事象についても理解を促進できるような学習者の既有知識に依拠したはたらきかけを考察すること
自分の考え
概念的理解を目指す授業を行う上で以下の3点が重要であると考える。
①何をもって概念的理解に到達したと言えるのか
②概念的理解はどのようなプロセスをたどるのか
③概念的理解を促進する教師の働きかけは何か
以上の3点に関して、今後は実践を繰り返しながら、検討していきたい。
論文情報
【タイトル】中学生における概念的理解の促進過程―日常的事象に関連づけたはたらきかけが科学的概念の理解に及ぼす効果―
【著者】石橋優美、藤村宣之
【雑誌名】『児童学研究』, 第44号 , pp.51-61
【出版年】2020年
【こんなときにオススメ】認知心理学の知見を生かした授業づくりについて知りたいとき
【タグ】概念的理解、認知心理学
参考文献
石橋優美、藤村宣之(2020):中学生における概念的理解の促進過程―日常的事象に関連づけたはたらきかけが科学的概念の理解に及ぼす効果― , 『児童学研究』, 第44号 , pp.51-61
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