社会的構成主義のよさを生かし、這い回る可能性を克服した社会科授業を構成することを目的とした大庭潤也氏の論文を紹介。
なぜこの論文を読んだのか?
子どもの「わかり方」に即した授業に関心があったからである。
子どもの学習意欲や思考過程に即した授業をするためには、「構成主義」という考え方がポイントになると考える。
「構成主義」は、認知的構成主義と社会的構成主義に大別されるが、大庭(2008)によると「認知心理学の研究成果では、人の認知活動は認知的構成主義から、社会的構成主義の考え方へとすでに変遷している」としている。
社会科教育において「社会的構成主義」に基づいた授業実践は、数少なく、大庭潤也さんの実践は参考になると思い読んだ。
この論文を読むとどんなことが分かるのか?
- 社会科授業を社会的構成主義で構成することのメリット
- 社会的構成主義を授業に具体化する方法
- 社会認識の深化を評価する方法
論文の要約
研究の背景
社会的構成主義は、「思考の領域固有性」や「知識の領域固有性」という子どもの個別性が重視される。
社会科は内容教科であり、子どもの個別性に合わせようとすると、思考が働かなかったり、認識形成に異なりが生まれたりする。
つまり、①社会科の内容を保証することができない危険性がある。
また、既有の知識や経験を頼りに授業を進めることは限られた時間内では限界があり、非効率である。
つまり、②はいまわる可能性がある。
本研究は、①と②の課題を踏まえて行われている。
研究の目的
社会的構成主義に基づく社会科授業構成によって子どもの社会認識を深化させること。
研究の方法
- 社会的構成主義についての検討
- 社会的構成主義に基づく授業モデルの開発
- 授業モデルに基づく単元の開発
- 実施した授業の効果検証
研究の有効性
調べてみたい問題の変容の結果から次の2点の有効性が示された。
- 問題の量と質が高まり、認識内容が広がり、深まろうとしている。
- 第2段階の「土台作り」の学習や自らの知識や経験を活かし、小売店の認識を深めようとしている。
小売店に対する認識の変容の結果から次の2点の有効性が示された。
- 「消費者」の視点から小売店を認識するだけではなく、「生産者」「高齢者」「環境」「住民」「流通」等へと視点を広げ、多様な視点と関連付け小売店を認識している。
- 自分と地域の人やモノとのつながりの中で小売店を認識しようとしている。
今後の課題
さらなる実践による理論仮説の有効性の検証
自分の考え
子どもの主体性の保証と、社会認識の質の保証を両立することは、社会科教育で実現すべき課題の一つであるとされている。
大庭の社会科授業実践は、この課題の解決を目指したものであると言える。
2つの記述内容の変容から、大庭の実践の有効性も示されている。
次の2点については、自分なりにもう少し深めていきたいと考える。
- この実践の中で学習者はどのような概念的知識を獲得したのか、あるいは変容したのか?
- 子どもの認識の変容と構成主義的な学びの関連がどのように位置づけられるのか?
論文情報
【タイトル】子どもの「わかり方」を踏まえた小学校社会科授業モデルの構築ー社会的構成主義に基づく単元開発を通してー
【著者名】大庭潤也
【雑誌名】全国社会科教育学会 , 『社会科研究』, 第68号
【出版年】2008年
【こんなときにオススメ】社会的構成主義について知りたいとき
参考文献
大庭潤也 (2008) 子どもの「わかり方」を踏まえた小学校社会科授業モデルの構築ー社会的構成主義に基づく単元開発を通して , 『社会科研究』, 第68号 , pp.41-50
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