#11 学習者の素朴理論の転換をはかる社会科授業の構成についてー「山小屋の缶ジュースはなぜ高い」ー

教授学習観

「山小屋の缶ジュース」問題を素材に、素朴理論を科学理論へ転換させる社会科授業のあり方について検討しようとした栗原久氏の論文を紹介。

 

 

この論文を紹介する理由

教科の論理だけではなく、子どもの論理(子どもはどのように分かっていくのか)を踏まえた授業構成として参考になるからである。

 

 

 

この論文を読むことで分かること

  • 学習者がもつ素朴理論の特徴
  • 素朴理論を転換させる授業構成

 

 

 

論文の要約

研究の背景

中学校社会科公民的分野では、「日常の社会生活と関連付けながら具体的事例を通して政治や経済などについての見方や考え方の基礎」を養う学習が求められている。

 

日常を生きる人びとは、経済など社会に関わる「見方や考え方」を、社会科などの授業を受けてはじめて身に付けるのではない。

 

生活の中でのさまざまな経験を通し、彼らは独自に「見方や考え方」を形成している。

 

つまり、授業に臨む学習者の頭の中は白紙ではなく、生活経験を通して形成された素朴理論が存在しているのである。

 

 

研究の目的

「山小屋の缶ジュース」問題を素材に、素朴概念を科学理論へ転換させる社会科授業のあり方を検討すること

 

 

 

研究の方法
  1. 学習者が用いる「見方や考え方」についての検討
  2. 素朴理論の特徴についての検討
  3. 素朴理論を転換させる授業構成の提案

 

 

 

研究の有効性

素朴理論を適切な考えに転換させる方法について以下の4点が明らかにされた。

  • 素朴理論を言葉で明確に表現させること
  • 認知的葛藤を生じさせること
  • 新しい考えの方が、説明力に優れていることを実感させること
  • 授業前後における考え方の変化を自己評価させること

 

 

 

今後の課題
  • 検証の対象が大学生、社会人に限られたこと
  • 転換の効果の持続性について検討できなかったこと

 

 

 

自分の考え

教師が教えたい内容(科学理論)を繰り返し連呼しても、子どもは学んだことにはならない。

筆記テストで正解することができたとしても、それは、科学理論を単なる文字として暗記しているだけかもしれない。

子どもには、子どもなりの論理がある。

学習指導要領や教科書だけを基に、教える内容を考えるだけでは、子どもの論理に基づいた授業をすることは難しいと考える。

常に、目の前の子どもはどのように学び、どこで躓くのかを想定しながら、授業を考える必要がある。

子どもの論理を重視すること(経験主義)と教科の論理を重視すること(系統主義)のバランスが、社会科授業を構成する上で重要であると考える。

 

 

 

論文情報

【タイトル】学習者の素朴理論の転換をはかる社会科授業の構成について―「山小屋の缶ジュースはなぜ高い」―

【著者】栗原久

【雑誌名】日本社会科教育学会 , 『社会科教育研究』, No.102 , pp.62-74

【出版年】2007年

【こんなときにオススメ】認知心理学の知見を生かした授業づくりについて知りたいとき

【タグ】中学校社会科 , 認知心理学

参考文献

栗原久(2007):学習者の素朴理論の転換をはかる社会科授業の構成について―「山小屋の缶ジュースはなぜ高い」― , 日本社会科教育学会 , 『社会科教育研究』, No.102 , pp.62-74

学習者の素朴理論の転換をはかる社会科授業の構成について | CiNii Research

 

コメント