「社会科の初志をつらぬく会」実践を再評価し、知識基盤社会に求められる社会科授業のあり方を検討することを目的とした小林隆氏の論文を紹介。
この論文を紹介する理由
知識の創造者を育成する授業のあり方を考える上で以下の2点について参考になるため。
①「社会科の初志をつらぬく会」実践の特徴
②「構成主義」における集団思考と知識構築の様相
この論文を読むことで分かること
- 「社会科の初志をつらぬく会」実践が評価される根拠
- 概念的知識が社会的に構成されるメカニズム
論文の要約
「知識基盤社会」では既存の知識を与えられる「知識の消費者」ではなく、むしろ新しい知識を創り出す「知識の創造者」を育てていくことが重要となる。
「知識基盤社会」に求められる社会科授業のあり方を検討することを目的とする。
- 「社会科の初志をつらぬく会」実践と集団思考についての検討
- これまでの集団思考研究における課題の抽出
- 河原篠光子『昭和町のうつりかわり』実践の分析
【集団思考の特徴】
集団思考では、頑なに認識を変えない子、柔軟に認識を変容する子、集団思考が深める場面でキーとなる子どもが存在する。そして、これらの子どもの意見を中心として、集団思考による知識の調整や再構成が行われ、概念的知識が社会的に構成される。
【集団思考の特徴を踏まえた教師の働きかけ】
教師には学習内容を包摂する具体的な教材提示をした後は、集団思考をある程度子どもに任せるとともに、「はいまわる」ことのないよう子どもの認識面を十分観察し、キーとなる子どもを中心に子ども同士の認識をつなげたり闘わせたりする働きかけが求められる。
自分の考え
「①知識は状況に依存する」
「②知識は社会的に構成される」
これら2点を踏まえると、「社会科の初志の会をつらぬく会(以下、初志の会)」実践は再評価されるべきだと考える。
それと同時に、初志の会実践が孕む「はいまわる」という問題に対して、いかに解決するかを考える必要がある。
その解決策として、本研究の「集団思考と知識構築の様相を分析すること」は重要である。
近年の認知心理学の知見と、社会科教育学が蓄積してきた知見を融合させることで、新たな可能性が見えてくるのではないか。
論文情報
【タイトル】「社会科の初志をつらぬく会」実践における集団思考と知識構築―構成主義の視点から―
【著者】小林隆
【雑誌名】『佛教大学教育学部論集』, 第24号 , pp.21-33
【出版年】2013年
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【タグ】小学校社会科、社会科の初志をつらぬく会
参考文献
小林隆(2013):「社会科の初志をつらぬく会」実践における集団思考と知識構築―構成主義の視点から― , 『佛教大学教育学部論集』, 第24号 , pp.21-33
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