子どもの社会認識の発達段階の解明とそれに即した授業実践を行った加藤寿朗氏・和田倫寛氏の論文を紹介。
この論文を紹介する理由
子どもの社会認識の発達に即した授業をするために何が必要なのか知る上で参考になるからである。
「知識をどのように教えるか」や「どのように探究させるか」という方法面だけで授業を構成するのではなく、その方法を用いて、「子どもの社会認識をどの段階からどの段階へ発達させるのか」という明確な意図をもって授業を構成することが必要である。
これこそが、資質・能力ベース、つまり「子どもが何ができるようになるのか」という視点の授業づくりにつながっていくのではないかと考える。
「子どもはどのように社会認識を発達させていくのか」については、以下の文献で詳述されている。
加藤寿朗 (2007)『子どもの社会認識の発達と形成に関する実証的研究ー経済認識の変容を手がかりとしてー』風間書房
この論文を読むことで分かること
子どもの社会認識発達の特徴
子どもの社会認識発達を促進する教育的働きかけ
子どもの社会認識発達を促進する授業構成
論文の要約
研究の背景
- 社会認識形成の「論理」と「心理」に即した授業構成の要請
- 子どもの実態に即した弾力的な指導の要請
- 発達段階に即した授業改善に関する具体的な提言の要請
研究の目的
社会認識発達に関する調査結果に基づいた子どもの社会認識を促進する考え方を、実験・実証的に検討しながら、小学校社会科授業モデルを開発すること
研究の方法
- 子どもの社会認識発達に関する基礎的調査
- 社会認識発達を促進する授業仮説の設定
- 授業仮説に基づいた実験的授業の計画・実施
- 授業仮説の検討・社会科授業モデル案の作成
研究の有効性
- 生産業者の工夫・努力を中間流通業者、小売業者、消費者との関係から考えさせることによって、個別的・断片的な認識から「流通」を中核とする構造化された認識へと発達させることができる。
- 「流通」を中核とする構造化された認識形成のために「22㎝のまっすぐのキュウリ」は教材として効果的である。
- 「知識を量的に増加させる段階」から「知識を関連付ける段階」そして「生産・流通・小売・消費活動を統合していく段階」へと授業過程を組織していくことが必要である。
今後の課題
- 授業モデルのさらなる吟味・修正
- 異なる学年や単元での社会科授業モデルの開発
自分の考え
これまでの社会科の授業構成では、社会認識形成の「論理」を授業構成の根拠としてきたものが多く見られる。
それは、「社会を認識させるためには、子どもに何をどのようにわからせるべきか、わからせることが必要か」ということに焦点が当てられる。
その結果として、子どもの認識過程や思考過程はあまり考慮されず、子どもにとってはやらされる授業が一般的になってしまう。
これからの教育では、「何を知っているか」ではなく、「知っているものを活用して何ができるか」が目指されている。
教師目線で、「何をどのようにわからせるべきか」を考えるのではなく、視点を子どもに移し、「何ができるようになるのか、そのためにどのように学ぶのか」を考える必要がある。
加藤寿朗先生は、子どもを視点にした研究を数多くなされているので、これからも実践を参考にしていきたい。
論文情報
【タイトル】子どもの社会認識発達に基づく小学校社会科授業の開発研究
【著者名】加藤寿朗 , 和田倫寛
【雑誌名】社会系教科教育学会 , 『社会系教科教育学研究』, 第21号
【出版年】2009年
【こんなときにオススメ】社会科の授業づくりについて知りたいとき
参考文献
加藤寿朗・和田倫寛 (2009) 子どもの社会認識発達に基づく小学校社会科授業の開発研究 , 『社会系教科教育学研究』 , 第21号 , pp.1-10
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