#16 概念変化のための協調過程―教室で学習者同士が話し合うことの意味―

教授学習観

「建設的相互作用」による理解深化の枠組みを捉え直し、それが教室場面で意図的に概念の獲得や変化を引き起こし得る可能性を検討した三宅なほみ氏の論文を紹介。

 

この論文を紹介する理由

  • ”教室”という場で学ぶ意味を考える上で参考になるため
  • ”学習観”や”知識観”を捉え直す上で参考になるため

 

 

この論文を読むことで分かること

  • 建設的相互作用のメカニズム
  • 建設的相互作用を促す具体的な手立て

 

 

論文の要約

研究の背景

社会文化的制約、特に学び合う仲間同士が互いに果たす役割によって引き起こされる支援の可能性は必ずしも十分検討されてこなかったように見える。

 

 

研究の目的

仮説実験授業と知識構成型ジグソー法による授業を対象に

①そこで起きる相互作用が建設的相互作用としての特徴をどう備えていたか

②外的基準から見て考え方の変化や概念変化と呼べる変化が起きていたか

について検討すること

 

研究の方法
  1. 二人の相互作用の認知プロセスの検討
  2. 仮説実験授業における検証
  3. 知識構成型ジグソー法における検証

 

 

研究の有効性

仮説実験授業

一つの授業書に含まれる複数の問題を次々の解く効果だけでなく、いくつもの授業書を系統的に学習して「わかってきたことを使う」機会を繰り返し保障してより程度の高い概念変化を湧出したり、その効果を長期にわかって持続させたりする効果がある。

知識構成型ジグソー法

既有知識の多少や考え方、やり方の得意不得意にかかわらず、授業に参加する生徒がそれぞれ自分なりのやり方で、他者との関わりを通して理解を深め、新しい知識を獲得し、次の学びを準備していた様子がうかがわれる。

 

 

今後の課題

さらに今後検討が必要なのは、獲得の不完全性と、不完全だからこそそれをきっかけにしてその次の学習につながる発展性である。

 

 

自分の考え

対話的な学びを、形式的な話し合いと捉えるだけでは深い学びにはつながらない。

認知心理学の知見に学び、そもそも”対話”とはどのようなメカニズムなのかを理解しておくことが重要であると考える。

それが知ることで初めて、対話の目的、対話を促す教師の働きかけが明確になるのではないかと考える。

 

 

論文情報

【タイトル】概念変化のための協調過程―教室で学習者同士が話し合うことの意味―

【著者】三宅なほみ

【雑誌名】『心理学評論』, Vol.54 , No.3 , pp.328-341

【出版年】2011年

【こんなときにオススメ】用語の定義について知りたいとき

【タグ】建設的相互作用、認知心理学

 

 

参考文献

三宅なほみ(2011):概念変化のための協調過程―教室で学習者同士が話し合うことの意味― , 『心理学評論』, Vol.54 , No.3 , pp.328-341

概念変化のための協調過程 | CiNii Research

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