#23 児童に自己調整を促す学習デザインの実践的研究

教授学習観

小学校において児童の自律的な学習活動を支援する学習デザインを試み、児童の学習の自己調整力および学力にどのような変容をもたらすかについて検証することを目的とした住田裕子氏の論文を紹介。

 

この論文を紹介する理由

小学校段階においてどのような学習デザインが自己調整を促すのか検証した研究は少数であり、本研究は参考になるためである。

 

 

この論文を読むことで分かること

  • 自律的な学習活動を支援する学習デザイン
  • 授業実践の効果検証の方法

 

 

 

論文の要約

研究の背景

現在行われている学習を自己調整学習へと移行するには、まず学習者自身が学習行動を自己決定できる環境があり、そこで学習が動機付けられる必要があるだろう。

 

どのような学習者にとってどのような学習デザインが自己調整を促すのかについて、小学校の教育現場での実践例は少なく十分明確になっているとは言えない。

 

 

研究の目的

小学校において児童の自律的な学習活動を支援する学習デザインを試み、児童の学習の自己調整力および学力にどのような変容をもたらすかについて検証すること

 

 

研究の方法
  1. 自律的な学習活動を支援する学習デザインの開発
  2. 授業実践
  3. 自己評価をもとにした分析
  4. テストスコアをもとにした分析

 

 

研究の有効性

【有効性①】

進度、学習場所、学習方法、相互作用の相手等を児童が自己決定できる環境を整え、算数科の教科書を主教材とした学習を6か月間行った結果、児童の自律的動機づけレベルが向上したことが示された。

 

【有効性②】

単元テストの到達度の比較から、従来の授業方法下での学習よりも学力を高めることが明らかとなった。

【有効性③】

児童のテストスコアが実践前に比べ10ポイント以上上昇したことから、本実践が従来の授業では学習に動機づけられずに学習行動を起こせなかった児童に対して有効であることが示唆された。

 

 

 

今後の課題

【課題①】

本研究の動機づけの測定として用いた振り返りシートは、実践後の児童の想起によるため、データの妥当性、信頼性に欠ける点があることは否めない。

【課題②】

本研究は6か月という短期の実践であるため、今後長期的な視点でも検証を行う必要がある。

【課題③】

学習方法による理解の質の違いや今後の学習への影響、さらには本実践の下で児童が獲得しつつある自己調整の機能が今後も発揮され続けるのかについても注視していく必要がある。

 

 

自分の考え

自己調整学習を促す上で、学習環境に注目することは重要である。

ところが、現実の学習環境は、昔の時代から改善されているとは言えないのが現状である。

つまり、決められて内容を順番に同じペースで、従順な社会の順応者を育てるための学習環境のままである。

本研究においても「実際の教室での集団をベースにした一斉授業で自己制御学習を促すには限界がある」とされている。

まずは、学習者自身が学習行動を自己決定できる学習環境をデザインする必要がある。

学びとは、本来主体的なものであり、自ら環境に働きかける中で、知識を構築していく。

であるならば、教師に求められるのは、学習者が主体的に環境に働きけることができる(自己調整学習に取り組むことができる)学習環境をデザインすることではないか。

 

 

 

論文情報

【タイトル】児童に自己調整を促す学習デザインの実践的研究

【著者】住田裕子

【雑誌名】『学習開発学研究』, 第13巻 , pp.125-134

【出版年】2021年

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【タグ】自己調整学習、学習環境

参考文献

住田裕子(2021):児童に自己調整を促す学習デザインの実践的研究 , 『学習開発学研究』, 第13巻 , pp.125-134

児童に自己調整を促す学習デザインの実践的研究 | CiNii Research
The purpose of this study was to design an elementary school...

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