#6 アクティブ・ラーニングを志向した小学校社会科授業における社会認識形成過程の考察

教授学習観

小学校社会科において子どもの社会認識形成過程を明らかにし、その社会認識形成過程の差異をもとにした具体的な授業改善の提案を行った神谷耕平氏長倉守氏の論文を紹介。

この論文を読んだ理由

子どもが社会認識を形成していく過程をどのように可視化することができるのか、また可視化された情報を基にどのように授業改善につなげていくことができるのかについて考える上で参考になるからである。

この論文を読むことで分かること

  • 子どもの社会認識形成のプロセスの捉え方(GTAを用いて)
  • 子どもの社会認識形成のプロセスに即した授業改善の方法

論文の要約

研究の背景

  • 開発した授業における子どもの社会認識形成過程をつぶさに分析した実証的研究の蓄積が求められていること
  • 学びの質を高めたり、学びを深めたりする上で、一人ひとりの子どもの社会認識過程を可視化して把握するとともに、それをもとにした授業づくりが重要であること

研究の目的

  • 子どもの社会認識形成過程に着目し、どのように社会認識を形成しているのかを明らかにすること
  • それを基にした具体的な授業改善の提案を行うこと

研究の方法

  1. 「授業前後理解比較法」による分析対象の確定
  2. 分析対象の行為の確定
  3. 社会認識形成の局面の確定
  4. 社会認識形成過程の確定
  5. 社会認識形成過程の差異をもたらす要因の考察
  6. 具体的な授業改善の検討

研究の有効性

社会認識形成過程の差異

「学習課題の対する予想についての検証」や「エキスパート資料相互の内容の関連付け」が行われたグループは、学びが深まるという結果を明らかにしたこと。

差異を埋める授業改善

  • 子どもたちが各資料を学習した段階や予想の段階で矛盾が生まれるような展開を仕組むこと
  • 子どもたち自身で必要な情報を発見できるよう資料を同様の構成にする
  • ある程度共通の情報を同程度入れておく

今後の課題

  • ある限定的な教室での実践による実効性の不十分さ
  • 社会的な見方・考え方の視点からの考察の必要性
  • 日常的な授業における評価の方法論として非現実的

自分の考え

社会科は「暗記教科だ!」「チョーク&トークだ!」という批判を受けてきました。

そうした批判の一つの要因として、評価されるものが「いかに知識を暗記しているか」になっている点にあると考える。

評価が変わらなければ、授業を変えることは難しいのではないかと考える。

そんな中、学習指導要領が改訂され、「何を知っているか」から「何ができるようになるか」へと重視するポイントが変更された。

いわゆる「コンテンツ・ベース」から「コンピテンシー・ベース」への転換である。

「コンピテンシー・ベース」の授業を実現するためには、子どもの学び方に注目する必要がある。

その学び方こそが「主体的・対話的で深い学び」である。

「主体的・対話的で深い学び」は、教師主導の授業だけで実現させることは難しいと考える。

あくまで、学びの主体は子どもであり、子どもの学びをいかに支援していくかが教師には求められているからである。

その支援の在り方を考えていく上で、本研究は非常に参考になる。

「主体的・対話的で深い学び」を実現するためには、活動としての「アクティブさ」以上に、思考としての「アクティブさ」が求められる。

そのような捉えにくい学びをつぶさに見取り、指導の改善につなげていくことが重要である。

 

本研究では、子どもの学びを見取り、指導の評価の改善につなげていくことが目的とされている。

「評価」に関しては、教師だけでなく、子ども自身でも活用できるようになることが重要である。

自分自身の学習状況を把握することは、自律的な学びや社会認識形成を促すことにつながると考えているからである。

今後は、「学びと評価の連動」や「学習としての評価」、「概念形成過程の自覚化」について理解を深めていきたい。

論文情報

【タイトル】アクティブ・ラーニングを志向した小学校社会科授業における社会認識形成過程の考察

【著者名】神谷耕平 , 長倉守

【雑誌名】『静岡大学教育実践総合センター紀要』

【出版年】2017年

【こんなときにオススメ】授業改善の方法について知りたいときに

【タグ】小学校社会科 , 評価

参考文献

神谷耕平・長倉守 (2017) アクティブ・ラーニングを志向した小学校社会科授業における社会認識形成過程の考察 , 『静岡大学教育実践総合センター紀要』 , 26 , pp.157-166

アクティブ・ラーニングを志向した小学校社会科授業における社会認識形成過程の考察 | CiNii Research
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