科学の論理と子供の論理との統合をめざす授業開発研究の実際と、授業評価及び授業改善の視点の導出までを含む一連の流れを、著者自身の授業のケーススタディとして有効性を検討することを目的とした佐藤克士氏、吉水裕也氏の論文を紹介。
この論文を紹介する理由
子供の論理に即した授業づくり及び授業改善のプロセスを学ぶうえで参考になるため
この論文を読むことで分かること
- 科学の論理と子供の論理が統合された社会科授業とは?
- 理論と実践をつなぐ授業研究とは?
論文の要約
理論研究が中心で、研究と実践が乖離しているのではないか。
②実践者視点の課題
授業構成論に基づく授業モデルの提案に留まり、子供の学びの実態等を踏まえ、授業の実践可能性を高めることには必ずしも貢献していないのではないか。
科学の論理と子供の論理との統合をめざす授業開発研究の実際と、授業評価及び授業改善の視点の導出までを含む「授業分析研究」の一連の授業研究過程を、筆者(佐藤)自身の授業実践をケーススタディとして、授業開発や授業実践レベルにおける具体的な内容や方法、さらにその有効性について検討すること
- 「研究仮説」の検討
- 獲得させたい知識の検討
- 診断的評価の実施
- 「単元仮説」の検討
- 単元の開発
- 「授業仮説」の検討
- 有効性の検証
- 授業改善の視点の検討
【理論仮説1の検証】
学校現場の授業研究過程の各段階において、実践者の意図や論理をそれぞれ「研究仮説」、「単元仮説」、「授業仮説」、「評価仮説」として明示し、授業研究を展開することによって、論理実証性や批判可能性が担保され、科学的な成果物として蓄積することが可能となることが示された。
【理論仮説2の検証】
単元の目標(本研究では「獲得させたい知識」)に対する学習前の子供の実態を、診断的評価を通して把握し、その分析結果及び単元開発の方略(「単元仮説」)を組み込み、「科学の論理と子供の論理との統合をめざした授業構成(開発)とすることによって、これまでの「学習者不在」の授業研究から脱却を図り、研究の目的・理念と教室のリアリティとを結ぶ授業研究の方法論となり得ることが示された。
自分の考え
本来、授業とは病院の診断・治療のように、子供の「できない」原因を診断し、それを授業(治療)によって「できる」ようにすることを目的として行う行為である。また、その授業を研究対象とする授業研究とは、原因究明に関わる仮説の吟味・検証を通して、専門職としての力量を形成することが目的である。
学習者を白紙の存在と捉えず、何らかの知識をもって授業に臨む存在と捉えている。
本研究で行われている診断的評価はまさに学習者が既にもっている知識の診断である。
学習指導要領で示されている目標を教師が解釈し、その目標を達成させるために、教師の論理で発問を選択し、学習者を導いていく授業。
そのような授業を改善するために、本研究は参考になるだろう。
「子どもの論理」について、さらに学びたい。
論文情報
【タイトル】科学の論理と子供の論理との統合をめざす社会科授業研究のケーススタディー小学校第5学年「日本の水産業」を事例にしてー
【著者】佐藤克士・吉水裕也
【雑誌名】『教育実践学論集』, 第15号 , pp.153-176
【出版年】2014
【こんなときにオススメ】授業研究の方法について知りたいとき
【タグ】子どもの論理、授業研究
参考文献
佐藤克士・吉水裕也(2014):科学の論理と子供の論理との統合をめざす社会科授業研究のケーススタディー小学校第5学年「日本の水産業」を事例にしてー , 『教育実践学論集』, 第15号 , pp.153-176
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